ラストピース

誕生日のプレゼントに、おもちゃ屋でジグソー遊園地を買ってもらった。
『動くジグソーパズル、９９９ピース』
パズルじゃなくて本物が良かったな。仕事で毎晩遅いママには言えなかった。
「完成したら一緒に遊ぼうね」
大きな箱を抱えて笑った。
一人ぼっちの夜のアパートで、壁を額縁に組み立て始めた。

完成図は箱に描かれていなかった。
観覧車。メリーゴーランド。ジェットコースターにコーヒーカップ。名前は知っていても、どんな形でどう動くのか知らない。想像ではめ込んで、失敗してやり直して、なかなか完成しなかった。
「お留守番が上手になったわね」
そう言って、ママの帰りはもっと遅くなった。


箱のピースを全部はめても、パズルは動かなかった。
「パズルじゃなくて、本物に二人で行きたかったな」
帰って来ない頭の中のママに手を振って、壁に開いた人型のすき間にもぐり込む。

――ぱちん。
ピースのはまる音がした。