遊園地の一生

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ある街に遊園地が生まれた。
最初は回転木馬をよちよち回すしかできなかったが、人々はこの赤ん坊を慈しみ、大切に育てた。
愛情を一身に受け、3年もすると遊園地はコーヒーカップやミニSLも動かすようになった。そこからは早い。迷路、観覧車、海賊船、コースター。どんどんアトラクションが増え大きくなった遊園地は、いつしか街のシンボルになっていた。住民は、幼少期は友達と、青年期は恋人と2人で、家庭を持てば子供を連れて、人生の節目を遊園地で過ごした。

しかし、誕生から100年が経ち、遊園地もあちこちガタがきていた。今ではゲームやライブ等の娯楽も増え、来園するのは日向ぼっこを楽しむ老人ばかりだ。

ある夜、遊園地は観覧車から街を見渡すと満足げに微笑み、静かに照明を落とした。

翌朝、遊園地が消えているのを散歩に出た住民が発見した。驚いた人々が集まってくると、跡地に新しい回転木馬が現れ、よちよち回り始めた。
ファンタジー
公開:24/03/21 18:13
更新:24/04/21 11:07

尻野ベロ彦( 東京 )

3児を都内のインターナショナルスクールに通わすサラリーマン。
子どもの頃「将来の夢は小説家」と言っていました。
「note」にも、細々と500字程度のショートショートを書いています。
https://note.com/sirino

【トピックス】
・第16回「1ページの絵本」入選
・第20回「坊っちゃん文学賞」佳作
・プチコン5 ~遊園地~ 優秀賞

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