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子供の頃、遊園地にライバルがいた。
その子はいつもジェットコースターの前に待ち構え、僕が列に並ぶと通せんぼした。
『ぼくよりちいさいこはのれないよ』
どうにか乗ろうと背伸びしても、そいつも同じ様に背伸びする。勝負は毎回僕の負けだった。
ある年の夏、僕はついに背くらべに勝った。
鼻歌まじりでコースターに乗り込む僕を、奴は『のれないよ』の吹き出しを背負ったままじっと見ていた。
人間と違って、看板は何年経っても背が伸びないんだ。念願の乗車だったのに、なぜだか全然楽しめなかった。
何年か過ぎ、大人になった僕は、敵に塩を送る事にした。
「二席分払うから、一緒に乗ろうぜ」
『ぼく はのれないよ』
錆びかけた吹き出しで意地を張る奴を土台から引っこ抜き、看板の脚に厚底のカバーを履かせる。
「シークレットシューズ。前よりでかくなったぞ」
一人と一枚で肩を組み、乗り場への階段を駆け上がった。
その子はいつもジェットコースターの前に待ち構え、僕が列に並ぶと通せんぼした。
『ぼくよりちいさいこはのれないよ』
どうにか乗ろうと背伸びしても、そいつも同じ様に背伸びする。勝負は毎回僕の負けだった。
ある年の夏、僕はついに背くらべに勝った。
鼻歌まじりでコースターに乗り込む僕を、奴は『のれないよ』の吹き出しを背負ったままじっと見ていた。
人間と違って、看板は何年経っても背が伸びないんだ。念願の乗車だったのに、なぜだか全然楽しめなかった。
何年か過ぎ、大人になった僕は、敵に塩を送る事にした。
「二席分払うから、一緒に乗ろうぜ」
『ぼく はのれないよ』
錆びかけた吹き出しで意地を張る奴を土台から引っこ抜き、看板の脚に厚底のカバーを履かせる。
「シークレットシューズ。前よりでかくなったぞ」
一人と一枚で肩を組み、乗り場への階段を駆け上がった。
青春
公開:24/03/17 09:45
プチコン5~遊園地
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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