うちゅうえんち

4
8

宇宙園地に娘と来た。

「ママ! あれ乗りたい!」

娘が指差したのは、三日月だった。確かに私も子供の頃に三日月に乗ってゆらゆらと宇宙空間を揺れるのは夢だった。

しかし三日月は一ヶ月に一日しか現れないので、その日は大行列となる。今日も既に八時間待ちのようだ。そんなに待ったら何もできない。

土星コースターや天の川プール、動物星座サファリなどを進めたが、娘はどうしても三日月に乗りたいと泣き出した。


使いたくなかったが、最後の切り札だ。


「一度きりですよ」

係員はそっと裏口から私達を通してくれた。

娘が三日月に向かって嬉しそうに走っていった。それを見ながら、係員が囁いた。

「これに免じて、月に早く帰ってきてくださいよ」
「まーだ」

係は残念そうに長い耳を垂れた。

空を見上げると、きらめく星空の中で三日月に座った娘が最近流行りの魔法少女の歌を歌いながら揺れていた。
ファンタジー
公開:24/03/17 09:07

たらはかに( 日本 )

たらはかに

https://twitter.com/tarahakani
猫ショートショート入選 「猫いちご ・練乳味」
渋谷ショートショート入選 「スク・ラブラブ・ランブル交差点(哀)」とか。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容