じゃんけん師弟

俺はじゃんけんがかなり強い。
給食の余ったプリン争奪戦。じゃんけんで負けた事は一度もない。
お祭り等のじゃんけんイベント。俺はいつだって最後まで残り、必ず賞品をゲットしていた。
俺は戦利品をじゃんけんの師匠へと見せに行く。俺がじゃんけんに強いのは師匠に鍛えてもらったからだ。
師匠は俺よりじゃんけんが強い。俺は師匠にじゃんけんで勝った事が一度もない。
「今日も私の勝ちだね」
体が弱く、１年の殆どを病院で過ごす師匠。
負けた俺は今日も、戦利品を全て師匠へと渡した。

そんな師匠に俺は大人になってなお挑む。
今日は絶対に勝てると自信がある。
いくぞ！じゃん・けん・ぽん！
俺はグー。
師匠はパー。
まだ負けじゃない。
俺は師匠のパーを掴むと、こぶしの中に隠していた指輪をその薬指へと嵌めた。
驚きの表情で何度も自身の左手薬指を見つめる師匠。
師匠の広げた手のひらに対し、俺は勝利のピースを突き出した。