世話焼きフライパン

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「きょっ…今日も綺麗だね」

真っ白な四角いフライパンに向かってぎこちなく囁く。少し噛んだし囁いているようには見えなかったかもしれないが、誰がなんと言おうと囁いたのだ。フライパンのド真ん中には「☓」のマークが浮かび、氷のように冷えていく。…やり直しか。

「…今日も綺麗だね」

少し間があってから今度は「◯」のマークがピカッと輝き、フライパン全体の熱も上がっていく。合格のようだ。口下手な私が購入した、この「世話焼きフライパン」。大切な人へ想いを伝える為、毎朝練習に付き合ってくれている。

フライパンへ流し入れた溶き卵は菜の花畑のように広がっていき、それをくるくると巻いていけば甘い卵焼きの完成だ。お皿に盛り、慎重にダイニングまで運ぶ。

「いつもありがとう。きょっ…今日も綺麗だね」

また噛んだ。そんな私に妻は微笑む。
キッチンでは、世話焼きフライパンが朝日を炒めるように煌めいていた。
ファンタジー
公開:24/03/18 20:20
月の音色 煌めくフライパン フライパンで世話を焼いてみた

ネモフィラ(花笑みの旅人)( 気の向くまま )

いつもご訪問ありがとうございます!
元:ネモフィラは咲うです。大原さやかさんのラジオ「月の音色」では、ペンネーム:花笑みの旅人として投稿しております。

日常に寄り添い、読んだ人がほんのすこ~しだけ前向きになれるような物語を書けたらいいなぁと思っている街灯の明かりをこよなく愛す人です。

最近1番幸せだなぁと感じるのはゆっくり眠っている時。その次がお散歩してる時かな?

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