Ｓｐｒｉｎｇ ｆｒｏｓｔ

熱したフライパンに水滴を落とすと、すぐに蒸発せず、フライパンの中でしばらく踊っている事がある。
温度差と蒸気の対流から発生する、ライデンフロスト効果と呼ばれる現象だ。沸点よりはるかに高い温度で焼かれ、水滴自身は熱さから逃れようと必死かもしれないが、きらきら光りながら滑る様に動く水の玉は、傍目には舞踏会の様に涼やかで楽しげに見える。

この現象を利用した、スプリングフロストというおまじないがある。
直訳すると春の霜。緑の祝祭である、３月１７日のセントパトリックデーにちなんで行われる雪追いだ。消え残る根雪や、空から降る名残り雪を熱したフライパンに落とし、躍らせる。蒸発した雪は春風と雨になって街に注ぎ、芽吹きの季節を連れてくるとされている。

踊る水滴の色や形で、その年の春を占う事もできる。
透明な水滴が淡く色づき、花びらの様に舞い散った年は、きらめく様に花々が咲きほこる、美しい春になるそうだ。