空を見上げて

0
3

今日は快晴。絶好の遊園地日和だ。
「晴れて良かったね」
桜が笑う。
「去年は大雨だったからな」
僕も笑った。
僕たちは1年に1度、この遊園地でデートする。料金が高すぎて、そう簡単には来られないのだ。
「ジェットコースター、空いてるみたい!早く乗ろう!」
桜に引っ張られるまま、広い園内を駆け回った。乗り物では僕が悲鳴を上げ、お化け屋敷では桜が半泣きになる。
休憩する間も惜しんで楽しみ、気付けば夜。最後に観覧車に乗って園内を見下ろす。カラフルな光が溢れ、まるで夢の世界だ。観覧車を降りると、満点の星空が美しい。
「楽しかったね」
微笑み合う僕らの耳元でピーと終了の合図がした。僕らはゴーグルを外し、二人用のVRカプセルを出る。
僕らが生まれる前に核戦争が起き、地下シェルターでしか人は生きられなくなった。青空も星空も、僕らは本物を見たことが無い。いつか、VRではなく本物の空を見られるのだろうか…。
SF
公開:24/03/18 16:30

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容