最後の遊園地

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遊園地のチケットをもらったので、3、40年ぶりに訪れた。
こんな歳になっても、やっぱりゲートをくぐれば童心にかえり、胸が弾む。
考えるより先に脚が動き、気付くと私はジェットコースターに乗っていた。
山あり谷あり。登ったと思えば急降下。あぁ、まさに我が人生そのものである。安定とは無縁の、スリル満天な80年。しかも、味わう間もなく終わりつつある。
でも、なんだか楽しいものだったな。二度乗る勇気はないが。
私の脚は止まらない。道を渡ると愉快な音楽が聞こえ、パレードが始まった。
それを見て驚いた。手を振りながら通り過ぎていくのは、友達、仕事仲間、ライバル、ヘルパーさん……そして家族。すべて私の人生に関わり、彩ってくれた人たちなのである。彼らに深く一礼し、私は先を急いだ。
たどり着いたのは、メリーゴーランドの前だった。
煌びやかな馬たちが、目の前を駆け巡っていく。
走馬灯か……。さようなら、人生。
ファンタジー
公開:24/03/17 23:36

藤原チコ

読むのも書くのも好きです。よろしくお願いします!

2022 ショートショート集『節目の一杯』をつむぎ書房より出版
2023 愛媛新聞超ショートショートコンテストにて「かぞくしんぶん」が特別賞に選ばれる
2024 第20回坊っちゃん文学賞にて「鯉のぼり」が佳作に選ばれる

発表し合える環境に感謝します。

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