夢営業

　それは、最近巷で、流行っていて、一種の話題になっていた。この男も、この話題の輪の中に入っていた。

話題とは、とてつもない悪夢を見るという事。

男は、この悪夢に対する特効薬があると聞き、これを服用している間は、悪夢を見ないらしく、販売している1人のセールスマンに会いに行った。

感じのいい男。男は、早速商談を始めた。商談は、トントン拍子で進み、10分程で終わった。

商談が終わり、男は、ほくそ笑んで、こう思った。

「俺達、薬販売のセールスマンが、沢山の他人の夢に干渉して、そいつに悪夢を見させて、そいつが薬を買いに来る。この薬がないと、悪夢を見続ける。俺達は、面倒なセールスに伺う事も、電話営業などもする必要がない。

客は、何せ、向こうから、ずっと、勝手にやってくる。夢を使った営業。これは実に景気がいい。」

一通り思いにふけると、セールスマンは、そのまま、街の中に消えていった。