ピアノ
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木更津駅近くの裏路地に、老舗のカフェがある。店に入ると、およそ60年代であろう昭和の歌謡曲でもてなしながら、無料のコーヒーが四角いテーブルの上にそっと置かれる。
夕方になれば、仕事にくたびれたサラリーマン達がちらほら顔を見せにやって来る。最近では、コーヒーを飲みながらもスマホから目を離さない客がかなり増えたが、なかには新聞を拝読し、昔のスタイルを崩さないご年配の方も健在である。
閉店間際になると、店主が2階から徐に下りてきて、黒い布を丁重に剥がし、ピアノの前にそっと座る。
鍵盤の上に両手を静かに据え、音が鳴ると店内は小さなライブハウスになった。
私がこうしてこのカフェを訪れるのは今日が最後である。明日には娘のもとへ引っ越さなければならない。
閉店した後も、店主は私のためにショパンを弾き続けた。
「今まで遊びに来て頂いたお礼です」
今日の演奏は、普段よりも柔らかに聴こえた。
夕方になれば、仕事にくたびれたサラリーマン達がちらほら顔を見せにやって来る。最近では、コーヒーを飲みながらもスマホから目を離さない客がかなり増えたが、なかには新聞を拝読し、昔のスタイルを崩さないご年配の方も健在である。
閉店間際になると、店主が2階から徐に下りてきて、黒い布を丁重に剥がし、ピアノの前にそっと座る。
鍵盤の上に両手を静かに据え、音が鳴ると店内は小さなライブハウスになった。
私がこうしてこのカフェを訪れるのは今日が最後である。明日には娘のもとへ引っ越さなければならない。
閉店した後も、店主は私のためにショパンを弾き続けた。
「今まで遊びに来て頂いたお礼です」
今日の演奏は、普段よりも柔らかに聴こえた。
その他
公開:24/03/06 11:26
2023/10/19に参戦した新参者です。忌憚のないコメントお待ちしております。
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