交換小説

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「小説をね、書いてみたんだ」

二年ぶりに部屋から出てきて、枯れた喉から絞り出したであろう言葉は、私の頭を殴る鈍器みたいだった。

不登校だった息子が、もう寝ようかと思ってた矢先に、私にそんな事を投げかけた。

「そう、そうなの、そう」

私はそれしか言えなかった。息子はコチラを見ていた眼を伏せて、また黙りこくった。

お腹は空いてないか、元気だったか、髪も背も伸びたね。
いっぱい声をかけたかったが、私はまだ温かいマグカップを両手で抱くことしか出来ない。

私も、この子も、口下手なのだ。嫌なところが遺伝してしまった。それとも育て方だろうか。

いつの間にか、息子はまた部屋へと戻った様だった。

テーブルの上には、何度も書いて、消して、薄汚れた紙の山が置かれていた。
口下手な女の子が、恋をする話だった。何故か息子を思い出した。

今度、長い長い、返事を書こうと思う。
その他
公開:24/03/04 22:37

なつふゆ

たまらなくなった時に書き出します。

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