クラゲの唄

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ぷかぷかと仰向けに波に浮いている。日が沈んで海と空が同じ色になるころ波に漂うと過去を見られるとクラゲに教わったのだ。浮いて空を見ているともやもやと光の点滅が集まったり離れたりして網の目の神経組織のように絡みつく。それからぐにゃぐにゃと襞の管のなか。あちこちに毛細血管が浮き出すから腸のなかか。襞の壁が振動する。胃に違いない。過去はちっとも見えない。次はぷにょぷにょの灰色の丘。脳だろう。いよいよ過去が見えるか。と期待していると真っ赤な血の海が揺れている。心臓か。過去はどこに?思っていると海の底からクラゲの唄が聞こえてくる。クラゲの声が聞こえる。

これは過去ではありません。過去じゃない?過去に在り処はありません。身体のなかは過去の軌跡。それが過去?過去は痕跡。胃や腸に過去の残骸が見えるでしょう。脳内に過去の不埒な妄想が。心臓には過去の失態の心拍が残っているかも。身体の内側は過去ばかり・・。
その他
公開:24/03/08 09:04

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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