ファンタジスタ
0
2
「もう別れよ」
夏祭りは雨で中止になった。浴衣を着たふたりが帰る途中、彼女は言い放った。
「いやだ、まだ一緒にいたい」
「…他に好きな人がいるの」
「…」
普段控えめな彼女が、そんな鋭利な刃物を持っていたなんて知らなかった。
彼はとっさに彼女の袂を掴み、逆方向へと引っ張った。
「ついてきて!」
彼女は唖然とした。そりゃそうだ。声が殆ど裏返っていたのだから。階段を駆け下りると、そこは河川敷の濁流が流れる場所。
「僕にも言いたいことがある」
彼は食い下がった。ずっと下を見て強張った表情を貫き通している。
「僕はずっと君のことが大好きだったけど、今日もっと君が好きになった。それは陰キャな僕なんて構わず浮気できたのに、ちゃんと別れてくれたから。何よりこんな僕と3ヶ月も付き合ってくれたから。ありがとう」
彼は精一杯の笑顔を見せた。人生で最も輝いた瞬間だった。
夏祭りは雨で中止になった。浴衣を着たふたりが帰る途中、彼女は言い放った。
「いやだ、まだ一緒にいたい」
「…他に好きな人がいるの」
「…」
普段控えめな彼女が、そんな鋭利な刃物を持っていたなんて知らなかった。
彼はとっさに彼女の袂を掴み、逆方向へと引っ張った。
「ついてきて!」
彼女は唖然とした。そりゃそうだ。声が殆ど裏返っていたのだから。階段を駆け下りると、そこは河川敷の濁流が流れる場所。
「僕にも言いたいことがある」
彼は食い下がった。ずっと下を見て強張った表情を貫き通している。
「僕はずっと君のことが大好きだったけど、今日もっと君が好きになった。それは陰キャな僕なんて構わず浮気できたのに、ちゃんと別れてくれたから。何よりこんな僕と3ヶ月も付き合ってくれたから。ありがとう」
彼は精一杯の笑顔を見せた。人生で最も輝いた瞬間だった。
恋愛
公開:24/08/04 04:26
更新:24/08/04 14:26
更新:24/08/04 14:26
2023/10/19に参戦した新参者です。忌憚のないコメントお待ちしております。
コメントはありません
ログインするとコメントを投稿できます