「通り雨」「竹林」「カスミソウ」
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ミルクにコーヒーをこぼしたような空がついに決壊し、ぽたぽたと雨が肩にシミを作るのと同時に、私はバス停の待合所に駆け込んだ。傘を持って出かけたはずだったのに、鞄の中には入っていなかった。そういえば折り畳み傘ではなくお気に入りの星柄の傘ではなかったか。ならばどこかに忘れてきたということになる。きっとさっき立ち寄った喫茶店だろう。きれいなカスミソウの飾り付けがあって、それに見とれている間にどこかに行ってしまったのだ。カスミソウに嫉妬するなんて悋気の強い傘もあったものだ。私はバス停の向こうに目を向けると竹林が生い茂っていて、わんぱくな竹たちが道のほうへ伸びている。するとその一つに傘がかかっているのを私は認めた。近づいて取ると私の傘だった。やっと機嫌がよくなったらしい。さそうと思ったが、すでに通り雨はやんでいた。
その他
公開:24/08/04 01:52
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