夏空の泡

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 木漏れ日から差し込む、眩しすぎる光をふんだんに吸い込んだ若草がほんの少し、水気を帯びていた。
向こうに見える、繁華街へと続く道は忙(せわ)しく車が往来し、ざざざぁというタイヤの音と、蝉の鳴き声がそれぞれの波長で空気を重ねていた。
 袖のないワンピースから伸びた腕はかろうじてまだ日に焼ける前で、それでも先程までのじとっとした湿気を微かにまだ感じていた。指先で首筋をなぞると、意外にもしっかりと粒として汗をかいていた。

 そして私は目を細め上を見上げた。
 
 幾重も繰り返す風のリズムに合わせ、空を遮る若草の葉の重なりが向こうの道とはアンバランスな一線を画し、リズミカルに引いては寄せる葉の隙間からは、さざ波のように、小さな光の泡は音を立てては夏空へと流れていった。
その他
公開:24/08/03 22:12
更新:24/08/03 22:15

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