お気に入りの家電について

「ママ。ガチャガチャやりたい」
『またそれ？家にいっぱいあるでしょ』
「これがいいの」
『はいはい…仕方のない子ね…』

幼少期、母にねだってカプセルトイを１回回す。
おままごとに使える人形用の食器セット。それを人数分集めたくて、私は同じものばかり回していた。

『ねぇ、ガチャガチャやっていかない？』
「母さん、またそれやるの？」
『これがいいのよ』

３０年経った今、あの頃と立場が逆転している。
昔懐かしの昭和家電のミニチュアが入ったカプセルトイ。母はそれをこよなく愛している。
おままごとするでもないが、自室に昭和の自宅をイメージしたジオラマを作り、そこに引き当てたミニチュアの家電を置いている。

「あっ！これ懐かしい！昔家にあったよね」
『よく覚えているわね。あなたもやってみたら？』

あの頃みたく、母から百円玉を受け取る。
お気に入りだった家電が出ますようにと願い、ハンドルを回した。