非常怪談

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 非常な事柄に関する怪談話を集めて、無情会館で大会が催された。参加希望者は千人に上ったが、無情にも会館への寄付金の額で出席の可否が決まり話が始まった。

 闇夜の日にいつものように夫は妻に暴力をふるっていた。隙を見て逃げ出した妻は非常階段に逃げた。夫婦の住まいは十三階。建物の外まではまだまだ長い。夫は追いかけて来る様子もなく、妻はほっとしながら暗い階段を降りていく。しかし、降りても降りても何故か十三階に戻っている。朦朧となり始めた妻の意識。それでも階段を降りる。その度に感じる無重力状態にいるようなフワッと浮かんだ感覚。暗くてよく見えないが、明らかに誰かが妻を抱えていた。闇夜に慣れてきた妻の目に映ったのは、爛れた顔を長い髪で隠した足のない元妻だった。元妻はあなただけ逃げるのは許さないと妻を抱えて十三階に戻していたのだ。

 非常怪談の話は延々と続き、最も寄付金が多い参加者が優勝し破産した。
ホラー
公開:24/08/06 07:43

松浦照葉( 福岡県 )

IT業界を卒業し、小説執筆中です。
普段はnoteでショートショートを投稿しながら、AmazonとAppleと楽天で小説、実用書の電子書籍を販売中です。
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