泡球

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キャッチャーの梶原が近づいてきて言った。「ついに出来たな」。僕は苦心の末、魔球を編み出した。
甲子園地区予選二回戦。僕は抑えとして八回から登板し、全ての選手を空振りさせてみせた。地元紙は僕のふわふわと浮きながら、目の前で視界から消えるほど落下するボールを「バブルボール」と呼んだ。それ以降の試合も抑えとして三振の山を築きチームに貢献。次の決勝の相手は強豪校だが負ける気はしなかった。
しかし甲子園の土を踏む事はなかった。相手はバブルボールを完全に見切り、ストレートや他の変化球に的を絞っていた。その結果、四球や大失点を出してしまった。魔球であるがゆえにあまりにも見分けがつきやすく、無視すればただのボール球だったのだ。
僕は翌年、大学に入学した。入学式では一杯新歓のチラシをもらった。バレーボール部やテニス部などのチラシを見て、ふと「この競技なら……」と思った。まだバブルボールは終わってはいない。
青春
公開:24/08/05 21:01
更新:24/08/16 21:37
泡 野球 クラフトビール

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