泡玉

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考古学者は手のひらサイズのボールを持ち上げて興奮で震えていた。これは「泡玉」と言われるもので、平安時代の歌人や一般大衆が自分の儚い思いを歌にしたため、紙に書いて丸めたものである。不倫相手との情事、片想いやラブラブだった期間を振り返るものなど出土された遺跡から大小様々な泡玉が見つかった。「昔の人達も変わんないな」と学者は呟いた。
またその古墳の近くの川沿いに焼けた紙の欠片が見つかった。それらを解析してまたも学者達は驚いた。玉だったのだ。そしてそこには上司や同僚への悪口などや世の中の不満が綴られていた。「こいつは燃やすにこした事ないな」と学者らは笑った。
泡玉の風習は全国に広がり、今日の人々の切ない恋模様は現代の泡玉として全国の神社の境内にぶらさがっていたり、地中にひっそりと眠っている。そして現代の不満は毎年年末に火の玉となってゆらりゆらりと川をおよいでいる
ファンタジー
公開:24/08/05 20:41
更新:24/08/06 16:00
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