家庭泡園

7
8

浜辺を散歩中、波打ち際で不思議なものを拾った。
それは小指の爪ほどの透明な球で、太陽にかざすと真珠の様な虹色に光った。ガラスや石にしては軽く、ふわふわ柔らかで、中は空洞になっているらしい。
「シーグラスじゃないよね。何だろう?」
「波の花の種だよ。先月まで満開だったからね」
首を傾げる私に、海の家のおじさんが教えてくれた。
海の波が作る泡の塊、波の花は知ってるけど、種ができるなんて初耳だ。
「この種を海にまいたら、波の花が咲くんですか?」
「お嬢さんが自分で育ててみるといい。夏休みの自由研究のネタになるぞ」
愉快そうに笑うおじさんに見送られ、波の花の種を持って帰った。

物置からこどもプールを引っ張り出し、水道水とキッチンの食塩でインスタント海水を作る。
「早く芽を出せ泡の種。出さぬとパチンと割っちゃうぞ♪」
私の歌が聞こえたのか、水に浮かべた種がパチンと二つに割れ、双葉の形にふくらんだ。
ファンタジー
公開:24/08/04 20:35
クラフトビールコンテスト② テーマ:泡

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO

ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容