お気に入りの家電について

朝、目を覚ますと私はすぐに鏡を確認する。
私の頭部は昨日と変わらぬ電子レンジ。それを見て、ため息を吐く。
今日も私の頭は元に戻らなかった…頭部が家電化する奇病に罹り早十数年…もはや親でさえ私の元の顔を覚えていない。
文字通り重い頭を持ち上げ、制服に着替えると今日も学校に行く。
教室には頭部がスマホ化したクラスメイトがいる。そんなクラスメイトが私を見て笑う。
私だって、好きでこうなったんじゃない。発症する前までは電子レンジが大好きだったが今は電子レンジが好きじゃない。
昼頃になるとクラスメイトが弁当を温めてくれと私に言ってる。弁当ではなく生卵を渡してくる。
私が困っていると幼馴染の男子が私の手を引いて教室から連れ出してくれた。
彼は周りに人の目がない事を確認すると私にキスをした。
「やっぱり今日も呪いは解けないか…」
大真面目な顔の、私の王子様。
照れる私は今日もチン！と音を立ててしまった。