「それ」を無くした絵

0
2

一人の男が一心不乱に、色を重ねすぎて黒に近くなった目の前のカンバスに感情をぶつけ続けている。まだ足りない、まだ足りないと嘆き、もはや狂気まで感じる程の執着をさらけ出しながら男は絵を描いている。

男は「完成」を無くした絵を描いていた。
万物の終着点であるそれを無くし、ひたすらに終わりの来ない絵とは一体どのような絵なのであろうか、そもそもそれは「絵」と呼べるのだろうか。男はそれを確かめるため、家族も地位も捨て、ついには自分の身を捧げるまでにそれに没頭していった。
男はこれからも絵の制作を止めることはないだろう。命の灯火が尽き、握られた筆が床を打つその瞬間まで、男はあの黒いカンバスに向き合い絵を描くことを辞めないだろう。その証拠に今日もまた、山奥にひっそりと佇むアトリエから、もう何重にも塗り重ねたキャンバスに色を足す音が聞こえるのだからー
ホラー
公開:24/08/01 15:19
更新:24/08/01 15:45
アトリエ 画家

ちむ( 愛媛県 )

文を書くことにハマり、最近活動を始めたひよっこ高校生です。お手柔らかにお願いします。

近況報告です!
長らく投稿をお待たせしてしまっていてすみません…ペンが(頭が)絶不調に陥っていまして中々「コレだ!」という作品が書けず…抜け出し次第投稿しますのでゆる〜くお待ちくださいませ!

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容