クリームソーダガラス

日曜日の午後、父さんとデパートに来た。
お目当てはパーラーのクリームソーダだ。レトロブームといって、最近はちょっと古いものが新しいんだって。

「お待たせしました。メロンクリームソーダガラスです」
エプロンドレスの店員さんが僕の注文を運んできた。丸いアイスと真っ赤なサクランボが乗った緑のソーダは、グラスもしゅわしゅわ泡立っていた。
炭酸でできたソーダガラスだ。グラスを持つと手がぱちぱちするのが面白くて、振り回していたら泡だらけになった。
「懐かしいな。父さんがお前くらいの頃、デパートのクリームソーダは特別だったんだ」
型板ガラスという模様つきのグラスで、父さんはブルーハワイのクリームソーダガラスを飲んでいる。「それって何味？」と聞いたら「子供には早い」と舌を出す父さんは、僕よりよっぽど子供みたいだ。
飲み終わったソーダガラスをかじりながら、大人になったら、僕もブルーハワイにしようと決めた。