しゅわしゅわおばけ

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あれはいつも夏にやってくる。

しゅわしゅわ

泡が消えていくときの音が後ろから少しずつ近づいてくる。
後ろを振り返るけれどそこには何もいない。

またやってきたな。しゅわしゅわおばけ。

泡って儚い。
いつかは消えてしまう。
けれどそれは確かに存在していた。
そのちょっとの間に泡が見ていた景色。
それを見せてくれるのがしゅわしゅわおばけだ。

今日はどんな景色を見せてくれるだろうか。

しゅわしゅわ

今は閉店してしまった喫茶店で飲んだ甘いクリームソーダの炭酸の泡。それは犬猿の仲だった妹と仲直りして楽しく談笑している景色を見せてくれた。

しゅわしゅわ

長い間机に置かれて消えかかったビールの泡。それは私が仕事で嫌なことがあって夫が「うんうん」と優しく聞いてくれている景色をみせてくれた。

しゅわしゅ・・・

あ。

気づくともうあの音は聞こえない。

続きはまた来年にお預けだね。
ファンタジー
公開:24/07/30 23:03
更新:24/07/31 19:44

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