やまなし

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帰宅しぬるい空気を感じながら冷蔵庫を開けるとひんやりとした空気を感じた。今日は午後休だ。昨夜から冷蔵庫で冷やしたお気に入りのコップとビールを取り出しゆっくりとそそぐ。さぁこれからどうしようか。ビールを一口飲み考えながら窓を開け、コップについた水滴を指先で払うと、金色の液体の中に泡が浮かぶのが見えた。泡が小さく浮かび消えていく。外から聞こえる子供の笑い声を聞きながら、お気に入りの‟かにが描かれたガラスのコップ”をぼんやり見つめていた。「なんだけこういうの知ってる気がする。……あクラムボンだ」宮沢賢治の童話の一つで少し不思議な話だった気がする。[クラムボン]という単語しか思い出せない。ふと目線をずらした先のカードケースにはしばらく使ってない図書カードがあった。「図書館で探してみようかな」めったにない午後休を有意義する過ごし方を見つけてしまった。少しぬるくなり泡の消えた金色をいっきに飲み干した。
その他
公開:24/07/30 21:34
更新:24/07/31 22:08

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