オリンピックのマラソンで

パリ五輪も終盤を迎え、男子マラソンが始まった。パリ市庁舎からオペラ座やコンコルド広場を通り過ぎ、トップ集団はヴェルサイユ宮殿に差し掛かった。その時、何かがコースに乱入してきた。あまりにも素速い動きと突飛な出で立ちに警備員たちは呆気にとられ、誰かが「止めろ」と叫んだが、その声は観衆のどよめきにかき消された。どよめきに続き熱烈に手を振る観衆。その対象はトップ集団ではない。ドレス姿にティアラという出で立ちで、軽やかに、しかも超速く走るマリー・アントワネットだ。先頭集団をあっという間に追い越し、振り向いて「大胆不敵であれ」と選手たちを激励して立ち止まった。観衆に手を振り「人生は短い、だから私は楽しむの」と言い残すと宮殿へ戻っていった。「男子でしたわ」とお付きの者に話したらしいが、どうやら女子マラソンに参加するつもりだったらしい。その後、選手たちは全員が無事ゴールであるアンヴァリッドまで走りきった。