家族は大切に

「ねえこれ買って！」
買い物かごを持つ腕が引っ張られた。綿菓子を持つ娘がねだる。いつの間に持ってきていたのか。
「ダメ」
今日は夫の誕生日だ。奮発していいものを買うのに綿菓子なんか買ってるお金なんか無い。
どのお肉がいいかあれこれ考えていると思ったよりも時間がかかった。予約したケーキを取りに行くため急いで店を出る。予約していた店に着くと親子が先にいた。母がケーキを受け取っている間、子供がショーケースの中のケーキを指さして
「ママこれ食べたい」
と言った。
私は咄嗟に右手を見た。握っていると思っていた右手にはお肉の入ったカバンがあった。
とにかく急いだ。急いで戻った。店内を端から探していく。一周したがどこにもいない。受付に行こうとしたとき、誰かと手を繋ぐ娘の姿が見えた。二人はそのまま店を出ようとする。慌てて呼び止めようとしたとき、
「ママありがとう」
と娘の嬉しそうな声が聞こえてきた。