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植物の種子で作られた泡花火は、煙も音もでないため、手軽に楽しめると大人気で、半年待ってやっと手に入れることができた。
この日のために頑張って仕事したと言っても過言じゃない。私はいそいそとアパートの中庭で準備した。
「あら、夕涼み?」
暗がりから声をかけてきたのは裏の一軒家に住むトシコさん。たまに挨拶する仲だ。
「一緒にいかがですか? 泡花火」
トシコさんはふふと笑って首を横に振った。
「そばで見せてもらえればいいわ。新しいものは怖いのよ」
了解でーすと答えてから、さっそく先端に火を点す。まもなく細長い胴体に熱が移ると、ガマの穂が弾けるがごとく急にモワッと膨れ上がり、四方八方にきめ細かな泡玉が飛び散った。トシコさんはおなかを抱えて笑った。
「変な花火ねえ!」
「パーティグッズなんですって」
「パーティと言えばお酒でしょ?」
「同感です」
私たちは夜が更けるまで、泡花火とビールを楽しんだ。
その他
公開:24/07/27 14:31

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨
以前のアカウントにログインできなくなってしまい、つくりなおしました。

清流の国ぎふショートショート文芸賞 入選

ときどき短編〜長編も書いています(別名義もあります)

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