シャボン玉

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どこかの少年がシャボン玉を飛ばした。シャボン玉は、青空へ舞い上がり、風に乗って流れていった。一つのシャボン玉は思った。何のために生まれたのだろう。まわりには同じ姿の仲間が飛んでいた。美しい森、色鮮やかな花、川のせせらぎ。この世界の素晴らしさを知った。仲間のシャボン玉がパチンと弾けた。シャボン玉は知る、消えてしまうことを。未来が閉ざされることを。自分もいつか、弾けて消えてしまう運命なら、なぜ生まれたのだろう。それでも、この美しい世界で仲間と生きていたいと思った。遠くを見つめる。あの美しい青はなんだろう。あの海まで自分は生きていられるのか。体が少しずつ、薄くなっていく。自分の存在は何なのか。次々と仲間が弾けて消えていく。最後に残ったシャボン玉は、遠くの海を眺めながら、弾けた。シャボン玉は、すべて消えてしまった。それでも、この世界にシャボン玉が存在したという事実は、永遠に、この世界で生きている。
ファンタジー
公開:24/07/29 01:07
シャボン玉

豊丸晃生( 大阪 )

ショートショートの神様、星 新一を崇拝しています。お笑い好きで怪談も好き。
お笑いネタのような作品が多いですね(笑)
【受賞作品】
「渋谷シティ」
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞受賞。
「我が家の食卓」
ベルモニーショートショートコンテスト入賞。
「電車家族」
隕石家族ショートショートコンテスト入賞。
「大男の力自慢大会」
「スカイフィッシング」
空想競技2020ショートショートコンテストW入賞。

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