お気に入りの家電について

俺は仕事から帰ってくると、息子のユニフォームをドラム式洗濯機の中に入れ、それが洗われる様子を見ながらビールを飲む。
ゆっくりと回り始める洗濯機。扉の向こうに、今日の息子の練習風景が見えた。今日も息子は俺以上に汗水たらし、練習に励んでいた。その姿はずっと見ていられる。だから俺は映し出されるそれから目を離さない。
今、俺が見ている光景は息子のユニフォームについた汚れの走馬灯だそうだ。
洗濯が終わると汚れはなくなる。だから、これは１度しか見られない。
「父さん、邪魔。どいて」
洗濯機に集中する俺を娘が邪険にする。
「あと、いつも言っているけど父さんの服はこっちに入れて。私の服と一緒にしないでよね」
これも年頃の娘あるあるか…ちょっと涙が出ちゃう。
そんな俺に妻がそっと耳打ちしてくる。
「あの子、毎朝あなたの服が洗濯されるのを見つめているの。あなたの働く姿が大好きみたい」
嬉しくて、また涙が出た。