泡の思い出

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 初めてお揃いの浴衣で出かけた夏の花火。多くの人出に揉まれ、君と固く繋いだ手と手は汗だくになっていたけど、しっかりと繋いだまま夜空を見上げて楽しんだ。僕が手配した「プロポーズ花火」がメッセージと共に打ち上げられると、君の眼からは大粒の涙が溢れていた。そして君は一言「ありがとう」

 僕は照れ臭さを隠すため、缶ビールのプルトップを片手で器用に開け、泡とともに喉を潤した。隣で君は僕を見上げながら「私にも一口頂戴」

 まるで抱きしめるような格好になりながら、僕は君の口元に缶ビールを運んだ。唇についたビールの泡が懐かしい思い出だ。

 あれから十年経った今年も君と一緒に花火を見に行ける幸せを感じている。あの時と違うのは、僕たちの手と手は、可愛い女の子の小さな手を経由して繋がっているということ。そして、あの時と変わらないのは、相変わらずビールを片手に持っているということと、君を愛する気持ちかな。
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公開:24/07/28 15:24

松浦照葉( 福岡県 )

IT業界を卒業し、小説執筆中です。
普段はnoteでショートショートを投稿しながら、AmazonとAppleと楽天で小説、実用書の電子書籍を販売中です。
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