温め続けて、苦節5年…

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仕事帰りにコンビニで買ってきたレトルトの豚の角煮を電子レンジへ入れる。

「温め続けて苦節5年、今宵も咲かせる肉汁の花。それでは歌って頂きましょう!電子レンジで「角煮灯篭、夏花火」」

抑揚をつけてそれっぽい前振りと曲名を言い、あたためスタートボタンを押すと、スポットライトが豚の角煮を照らし、心に沁みるイントロが流れ始める。私を曲の世界観へ引きこんだところで、満を持して電子レンジが演歌を歌い出した。この電子レンジとの付き合いは5年くらい。社会人になり一人暮らしを始めた私へ、大学の頃の先輩が譲ってくれたものだ。毎回演歌を熱唱し、その熱で料理を温める。

―ありがとうございました…

歌い終えて深々と挨拶する電子レンジへ盛大な拍手を送り、豚の角煮を取り出す。
早速、冷えたビールと一緒に頂こう!とろりとした豚の角煮を口へ運べば、あぁ幸せ!熱唱から出た深みのあるこぶしが、今夜もよ~く効いていた。
ファンタジー
公開:24/07/23 06:53
更新:24/11/03 15:43
月の音色 お気に入りの家電について 電子レンジはなんとなく 哀愁があって好き

ネモフィラ(花笑みの旅人)( 気の向くまま )

読んでくれてありがとう!

寒い季節になったから、気が向いた時にふらりと立ち寄ってゆるーく投稿しています。

 

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