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クチナシの香を焚きしめた艶やかな五枚の扇が、御簾の如き網の向こうで舞い踊り、夏の夜に涼を描く。
リサイクルショップでこの扇風流機と巡り合えたのは数年前。月日を重ねたならではの趣深さと雅な扇の羽に心惹かれて購入した。平安時代の姫君達が着ていた十二単のかさね色目のように、毎日変化する羽の配色がなんとも風流で、美しい月夜には琴の音色も聞かせてくれる私のお気に入りの家電だ。
しかし、年々暑くなる夏に上品な風を送り続ける扇風流機では太刀打ちできず、エアコンに頼る日も増えた。寂し気に佇む扇風流機を横目に今日もエアコンをつける。すると、電源もいれてないのに扇風流機から一陣の風が起こり、観葉植物の葉が一枚私の足元へ飛んできた。拾い上げてみると葉には「薄情なお方。私をお忘れですか?」といった旨の和歌が書かれていたので、慌ててあぁでもない、こうでもないと扇風機のように首を振りつつ返答の和歌を考えたのだった。
その他
公開:24/07/23 06:50
月の音色 お気に入りの家電について 扇風機の風で過ごせたら いいのになぁ…暑いよね

ネモフィラ(花笑みの旅人)( 気の向くまま )

いつもご訪問ありがとうございます。
元:ネモフィラは咲うです。大原さやかさんのラジオ「月の音色」では、ペンネーム:花笑みの旅人として投稿しております。
物語を読んでくださったうちのどなたか一人にでも、笑顔になってもらえたらすごく嬉しいです。

すこしおやすみします。

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