遥かな君

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星の夜。砂浜に座り、君は炭酸のグラスに耳をあてる。
「泡たちのはじける音が好きなの」、と小声で教えてくれた。
好きなものまで、ひそやかでミニマムで君らしい。

「泡は、なぜ丸いのかな」
琥珀色のグラスの気泡を眺め、君が聞くから、「表面張力が働くからだよ」と答えてあげた。
「ロマンチックじゃないのね」
君は笑う。
今の問いにどう答えればロマンチックになるのか、理系の僕には分からない。
沈黙が続いた。
波打ち際には白い潮の泡が押し寄せ、誘うようにまた沖に戻っていく。
「泡宇宙って知ってる? ビッグバンのあと、泡のように無数の宇宙が生まれて、今もどこかで同じ時を刻んでる。地球そっくりの星もあるはずで」
君は驚いたように目を見開いた。
ああ、これもロマンチックとは程遠かったか。
泣きそうになっていたら、
「なんだバレてた? 私がよその泡から来たこと」
と君は言い、グラスを一気に飲み干した。
SF
公開:24/07/24 17:40
更新:24/07/24 17:41
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