泡書、一筆!
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一つに束ねた艶めく長い黒髪、涼やかに揺れる薄浅葱の袴。
瞳を閉じて土手に佇み、どこまでも広がる夏空を前に師匠は静かに呼吸する。その横顔には、茹だるような夏の暑さも、叫ぶ蝉たちの声も鎮める清廉さがある。
…りーん
どこからともなく美しい風鈴の音色が聞こえたかと思うと、草色の風が豊かに香りたつ。師匠はその一瞬を逃さんと言わんばかりに目をかっと見開き、流れるような所作で筆の尾骨を咥えると素早く息を吹き込む。すると、軸を通った空気が前骨から泡を押し出し、ゆらりと膨れる。泡筆。泡の筆先で空に一筆、泡文字を浮かべる書道。私は偶然見かけた師匠のパフォーマンスに魅了され、すぐさま弟子入りした。
土手を軽やかに舞い、しかし空へは豪快に泡筆を振るう師匠の首筋には汗が走る。
【涼風一陣】
水色に透き通る夏空の半紙への一筆。
煌めき連なる泡文字は一瞬の芸術で、すぐに弾けると一陣の涼風が土手の草原を割った。
瞳を閉じて土手に佇み、どこまでも広がる夏空を前に師匠は静かに呼吸する。その横顔には、茹だるような夏の暑さも、叫ぶ蝉たちの声も鎮める清廉さがある。
…りーん
どこからともなく美しい風鈴の音色が聞こえたかと思うと、草色の風が豊かに香りたつ。師匠はその一瞬を逃さんと言わんばかりに目をかっと見開き、流れるような所作で筆の尾骨を咥えると素早く息を吹き込む。すると、軸を通った空気が前骨から泡を押し出し、ゆらりと膨れる。泡筆。泡の筆先で空に一筆、泡文字を浮かべる書道。私は偶然見かけた師匠のパフォーマンスに魅了され、すぐさま弟子入りした。
土手を軽やかに舞い、しかし空へは豪快に泡筆を振るう師匠の首筋には汗が走る。
【涼風一陣】
水色に透き通る夏空の半紙への一筆。
煌めき連なる泡文字は一瞬の芸術で、すぐに弾けると一陣の涼風が土手の草原を割った。
ファンタジー
公開:24/07/24 09:30
更新:25/08/12 16:21
更新:25/08/12 16:21
泡
読んだ人に笑顔になってもらいたいという想いから投稿し始めましたが、私の文章ではそういったものが届けられないのだろうなぁと気づかされました。
今は書こうと思うとただただ悲しくなるだけなので、もう投稿することはないかもしれません。
アカウントは残しますがこれ以降浮上することもないかと思います。
短い間でしたが今までありがとうございました!
たくさん学ばせて頂きました。
お元気で。
2025.9
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