夏の季節の夏子さん

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今年もこの季節がやってきた。サウナみたいな温風が肌を撫で、風鈴をちりんと鳴らすこの季節。少年は思う。こんな時期には、きっとあの人が現れる。毎年性懲りも無く現れ、いつの間にかふらりと消えているあの人。夏子さんが、やって来る。
「少年!去年ぶりだねえ、元気かい?」「お久しぶりです。夏子さん、今年の温度設定ミスってませんか?暑すぎて死にそうなんですけど…」
風に乗ってベランダに降り立ったその人に、少年は話しかける。
「いやあすまんね!今年は推しのライブがあるからね、まだまだ上げてくつもりさ」
「ええっ、それはちょっと…それよりも、虫の数増やして下さいよ」
「ふーむ、少年の頼みなら仕方ない。そうしておこう」
少年は苦笑いしながら、ふわりと笑う夏子さんの顔を見る。整っていて、傍にいると心強い。暑さか別か、少年は少し赤くなった顔を晒すまいと言葉を繋いだ。「とにかくここじゃ暑いんで、中で涼みませんか?」
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公開:24/07/23 23:37
更新:24/07/23 23:47
擬人化

ちむ( 愛媛県 )

文を書くことにハマり、最近活動を始めたひよっこ高校生です。お手柔らかにお願いします。

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