夏の夜の鳥居にて

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 夏にしては涼しさをも孕んだある日の真夜中、2人の男は鳥居の前にいた。ライトアップされた朱色の鳥居はそのせいか新しく見える。
 鳥居の奥には小さな鳥居が何基も続く。千本鳥居と呼ばれるこの鳥居の群れは男達を歓待するかの如く、泰然とその朱を保っている。男達は夜の空気を肌で感じながら鳥居を潜る。その瞬間、群れの存在が膨れ上がるのを2人は感じた。鳥居の真ん中に敷かれた石畳は冷気を帯び、その冷気を、2人は靴の上からでも感じ取ることができた。
 一定の間隔を空けて、続いてゆく朱の鳥居。その永遠とも言える空間に2人の男は言葉を失う。一方の男は当たり前のように続く鳥居の当然さに、一方の男は時間をも閉じ込めてしまいそうな空間の異常さに、それぞれ魅せられていた。
 島木と笠木が空を幾重にも分断し、その分けられた空の隙間から歪な輪郭をした月が顔を出す。鳥居の群れはその月をも切り刻み、辺り一帯を朱色に染め上げた。
青春
公開:24/07/20 21:29
更新:24/07/20 21:30

おいしい舞茸( きょーと )

舞茸です。
舞茸そのものです。

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