雪の世界

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こんな狭い世界から出ていきたい。
子供の頃からずっと思っていた。
一年じゅう雪が降っている。
友達といえば、せいぜい雪だるま。
それに、常に誰かに見られている、そんな閉塞感ただよう世界。
大きくなったら、きっと外の世界へ旅立つ、そう決めていた。

「ここから出て行った人はいるの?」
子供の頃、おばばに聞いたことがある。
「ずうっと、昔、出て行った者がいると聞いたことがあるなあ」

体が大きくなり、狭い世界がさらに狭く感じられるようになった。
この世界にいるのは、もう限界だ。
こっそりと旅の支度を始めた。

ある日、空をめがけて矢を放つ。
狩猟するふりをして、この日のために必死に練習を積んでいた。
空に矢が当たり、パチン、大きな泡がはじける音がした。
空に裂け目ができた。

男は、その裂け目から外の世界へ旅立った。

この国の名は「スノードーム」。
狭く閉ざされた雪の世界。
ファンタジー
公開:24/07/20 16:30
更新:24/07/20 20:43

かのこ

最後まで読んでくださった方、感謝!

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