あぶくセミ

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アメリカでは素数セミの大襲来で大迷惑を被っており、日本ではセミの鳴き声一つ聞かない。きっと日本の暑さにやられてしまったのだろう。ネバダの屋外では肉が焼けるらしいが、日本では蜃気楼が地平線の向こうで揺れる。上も下も関係なく。夢と理想を追いかけていたあの日の幼い自分がこちらへ手を振る様子を見て、あぁ、これは死ぬ前に見る光景なのだろうな、と思った。そこから目を開ければ、病院の天井であり、医者から手渡された請求書に血の気が引く。やれやれ、頭が上せそうだ。冷房がガンガンに冷えた病室で、そう思う。仕事を選り好みできるわけではないが、なるべく熱中症の二の舞は避けたい。求人誌を片手にそう思う。泡を吹いて倒れたセミのように終わらなかった自分は、また酷暑の中で生き方を模索しなければならない。やれやれ、なんて厄介なんだ。味の薄い病院食でポテトチップスが恋しくなる。粛々と溢れる欲は、虫だと味わえない娯楽であった。
その他
公開:24/07/22 17:14

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