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落とした麦わら帽子はあっと言う間に見失ってしまった。母に手を引かれながら歩く真夏の大通り。どちらを向いても、人、人、人。こどもの目線では、祭りの神輿も担ぎ手も見られない。頭はクラクラするし、足も痛い。夏祭りなんて大嫌いだった。なのに母ときたら、目的地までたどり着くなり、満面の笑みで言うのだ。
「さぁ、福引きだよ」
「うん……」
「嬉しくないの?」と、不思議そうに首をかしげながら、私の手に福引き券を握らせる母。
順番が来てガラガラを回すと、おじさんが鐘を鳴らした。
「お嬢ちゃん、大当たりだよ!」
「まぁ、何かしら?」
大げさにはやし立てる母につられ、乗り気じゃなかった私も期待してしまう。だけど景品は去年と同じポケットティッシュだった。
「また来年、来ようね!」
「もうヤだ〜!」
あれから二十年。同じやり取りを娘としているが、きっと母も空で笑っているだろう、「また来年の楽しみがあるよ」って。
「さぁ、福引きだよ」
「うん……」
「嬉しくないの?」と、不思議そうに首をかしげながら、私の手に福引き券を握らせる母。
順番が来てガラガラを回すと、おじさんが鐘を鳴らした。
「お嬢ちゃん、大当たりだよ!」
「まぁ、何かしら?」
大げさにはやし立てる母につられ、乗り気じゃなかった私も期待してしまう。だけど景品は去年と同じポケットティッシュだった。
「また来年、来ようね!」
「もうヤだ〜!」
あれから二十年。同じやり取りを娘としているが、きっと母も空で笑っているだろう、「また来年の楽しみがあるよ」って。
その他
公開:24/07/22 15:17
☆やコメントありがとうございます✨
以前のアカウントにログインできなくなってしまい、つくりなおしました。
清流の国ぎふショートショート文芸賞 入選
ときどき短編〜長編も書いています(別名義もあります)
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