雨が歌えば

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身体ごと沸騰しそうな猛暑の午後、サイダーブルーのアワソルで、夕立とセッションする。
炭酸入りのビニール樹脂でできた、歌う雨傘だ。雨の雫が生地を叩いて刺激すると、音符型の泡が立ち、傘骨を五線に楽譜を紡ぐ。ジャズ、クラシック、ロックにボサノヴァ。雨脚の強さや温度、傘の差し加減でビートは無限に変化し、世界に一つの空創協奏曲が生まれる。

ひとしきり溜まった雨が傘を伝う時、泡の楽譜は弾け、歌となって流れ出す。
一人しみじみ味わうのも良いが、通りすがりの誰かと傘を傾け、楽譜を交わすとさらに楽しい。
「相合泡しませんか?」
「飛び入り歓迎です!」
傘触れ合えば多生の演。信号待ちの交差点で、アーケードの軒先で、繋がったアワソルがソウルフルなフュージョンを響かせる。

「ゲリラ豪雨ライブだな」
「もう一曲やりますか」
絶え間なく降り注ぐ雨と万雷の喝采。
泡のドームになった街で、雨頂天なフェスが夜通し続く。
ファンタジー
公開:24/07/21 20:27
クラフトビールコンテスト② テーマ:泡 雨頂天(うちょうてん)

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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