ビアグラサン

R社のキャンペーンで景品が当たった。クラフトビールの会社だ。箱を開けると、サングラスが入っていた。取説の表紙には『ビアグラサン』とある。ビールとグラサンの関係性はなんだろう。それを掛けて、窓から景色を見る。ただのサングラスっぽい。その時、うちの猫が窓から帰宅した。あれ？ 猫の背中からビールみたいな気泡が舞い上がった。泡をよく見ると小魚の形をして泳いでいた。不思議だ。取説を読むと〈見てる人の気持ちが泡に現れます〉とある。試しに窓から行き交う人々を見てみた。体から星や花、飴玉、コインみたいな泡が舞い上がった。どんな気持ちなんだろう。
玄関のチャイムが鳴った。ドアを開ける。彼女だ。
「どうしたのサングラスなんか掛けて」
「君が眩しすぎてね」
「酔ってるの？」
「飲もうか」
頷く彼女を見ると、ハートの泡が浮遊し始めた。
ビールで乾杯。泡は窓から空へ。漂う雲に呑み込まれ『LOVE』の文字を描いた。