泡と町

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 私の住む町で不可解な事件が起こった。町中の酒屋さん、コンビニ、バーなど、町中の全てのビールの泡だけがきれいに何者かによって盗まれたのだ。
 泡があってのビールだし、ビールあっての泡だ。泡のないビールを飲んでも味気ない。口に白い髭が生えない。注ぐ時、泡を立てないように配慮する必要はなくなった。
 町中が泡欲しさに発狂しそうになっていた。町は警察を総動員し、捜査にあたった。
 そんなある日、私は家の近くの神社の裏で泡をチューチュー吸う宇宙人を見つけた。神社の境内からはみ出るんじゃないかってくらいの量の泡でブクブクになっていた。
「いやあ、地球の泡は本当おいしいなー。ワタクシは月から来たのだが、月にはこんなおいしい泡はないよ。君も一緒にどうだい?」
 泡だけのビールなんて、地球のない月と同じだよって言おうとしたけどやめておいた。
SF
公開:24/07/18 00:16
更新:24/08/20 20:56

久保田毒虫( 広島 )

ショートショートコレクター兼アマチュア作家です。
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