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平日の午後、リモート会議が早く終わってすることがない。冷蔵庫をのぞくとセロリが一つ。セロリを机上に置いてじっとみる。セロリを凝視するなんて人生で初めての快挙ではないか。葉の緑のグラデーション、予想外な葉脈の配列。セロリの模様に隠れるようなパターンを観察すると、大きな葉が前髪のようにみえる。水分を含んだ太い葉脈が鼻筋になって、その両側のくぼみが目にみえる。そして笑う唇。セロリが一つの女性の頭部の様相を帯びて、気がつくと顔が現れた。おお、それは確かに羽田喜美子の顔だ。羽田喜美子をPCですぐに呼び出した。画面に映ったのは羽田喜美子ではなくネクタイ姿の中年男性。事務的な口調で用件は何だと聞く。セロリの葉のなかに羽田喜美子の顔が浮かんでいると言うと中年男性は「了解。ときどき姿を消すと思ったらそちらのセロリに隠れていたのですね。すぐに自宅のクローゼットに戻るように伝えて下さい」とPC画面が閉じた。
その他
公開:24/07/20 08:53
2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。
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