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「……よし、吹くか」
柄にもなく気合を入れ、文具店で買ったバブレターセットにストローを付けた。
シャボン液の形をした泡タイプの便箋だ。届けたい言葉を思い浮かべながら息を吹き込み、風に乗せて送り出す。相手が受け取ると泡が弾け、音声メッセージが流れる仕掛けだ。
こんなファンシーグッズ、女子高生でもあるまいに。今更の照れと意固地がわだかまり、泡は斜に構えた平行四辺形になった。
メッセージの内容や送り主の心情が、泡の色形にも表れるらしい。ひねくれた軌道でよたりと浮かぶ金の泡を追い立て、ボロアパートのベランダへ。
二十歳の誕生日を目前に家を飛び出し、便りひとつ寄越さずにきた不孝者だ。小奇麗に飾った七色の詫び状より、苦くて酒臭い溜息の方がよっぽど雄弁だろう。
「ちょっと良いビールを持って、次の休みに帰るよ。一緒に飲もうぜ、親父」
グラスに似た四角い泡に、乾杯代わりにストローを合わせ、空へ放った。
柄にもなく気合を入れ、文具店で買ったバブレターセットにストローを付けた。
シャボン液の形をした泡タイプの便箋だ。届けたい言葉を思い浮かべながら息を吹き込み、風に乗せて送り出す。相手が受け取ると泡が弾け、音声メッセージが流れる仕掛けだ。
こんなファンシーグッズ、女子高生でもあるまいに。今更の照れと意固地がわだかまり、泡は斜に構えた平行四辺形になった。
メッセージの内容や送り主の心情が、泡の色形にも表れるらしい。ひねくれた軌道でよたりと浮かぶ金の泡を追い立て、ボロアパートのベランダへ。
二十歳の誕生日を目前に家を飛び出し、便りひとつ寄越さずにきた不孝者だ。小奇麗に飾った七色の詫び状より、苦くて酒臭い溜息の方がよっぽど雄弁だろう。
「ちょっと良いビールを持って、次の休みに帰るよ。一緒に飲もうぜ、親父」
グラスに似た四角い泡に、乾杯代わりにストローを合わせ、空へ放った。
青春
公開:24/07/20 00:40
クラフトビールコンテスト②
テーマ:泡
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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