泡の国

浜辺で密漁されている養殖鮑を助けたところ、生産者から「ウチの島に来てくれ」と招かれた。
やってきたのは泡の国の異名を持つ得島。
今日は祭りだとウェルカムドリンクに差し出されるは泡盛。それを飲んでつい陽気になってしまう。
島人は皆、その手に石鹸を持っている。それを泡立て、僕の顔へと塗りたくる。
これは無病息災と海の安全を祈るお守りだそうだ。
「父の鮑を守ってくれて、ありがとうございます」
僕の顔に優しく泡を塗る美しい女性。酔いが醒め、恥ずかしくなる。
顔を洗ってきます！と、その場を逃げ出そうとする僕の手を女性は強く掴む。
「泡沫の夢はしっかり掴んでおかないとなかった事にされます。私は貴方との出会いを夢で終わらせたくありません」
見つめ合う僕ら。自然と唇が吸い寄せられる。
マジックアワーが僕らを祝福するかのように照らしてくれた。島人が僕らを泡踊りで包んでくれた。
急な展開に僕らはあわあわした。