たかが泡、されど泡

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異変は金曜日の夕方に突然始まった。ビアガーデンや居酒屋でビールの泡が出なくなり、ビールは気の抜けた苦い水と化した。抹茶やカフェラテも泡立たず、作れなくなった。ボディーソープやシャンプーも、まったく泡立たない。他にも泡が出ないことに起因する様々な「困った」が広がった。世の中から泡という泡がなくなってしまった。人々は、これまで泡がこんなに大切なものだと思ったことはなかった。

「いつでも泡があるのが当たり前だと思っている人間たちも、これで少しは泡のありがたみがわかったことだろう」
「はい。ではそろそろ断泡を中止しましょうか、泡神様」
「そうだな、今回はこれくらいにしておこう。やりすぎて、我々のこれまでの功績が水の泡になってはいけないからな」
泡神様と弟子は夜明け前にこんな会話をしていた。

泡神様は日の出と同時に人間たちに再び泡を与えた。
世の中に泡のある日常が戻った。
その他
公開:24/07/20 06:00
更新:24/07/24 07:52

ジャスミンティー

2023年10月から参加しています。作品を読んでいただき、ありがとうございます。

最近noteへの投稿も始めました。よろしかったら、そちらもご覧ください。エッセイ、短歌なども載せています。https://note.com/real_condor254 
 

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