バブルーモーメント

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大きな夕日が海面まで降りてくるのを砂浜から眺めている。

「今年こそ見たいなぁ……」

夏の賑わいは泡沫の夢だったみたいに静かな秋の夕暮れ時の海岸で、私はじっとその時を待つ。しばらくして夕日が海へ着水すると、その衝撃で無数のオレンジ色の泡が海から立ち昇った。まだ沈み切らない夕日に煌めきながら海上を漂う幻想的な泡たちにうっとりしていると、予想通りのタイミングで渡り鳥の群れが現れた。進路方向を浮遊するオレンジ色の泡を見つけると、渡り鳥の群れは一斉に嘴で泡を啄き、弾けた泡は群青色の細かな光の粒となって空へ滲んでいく。ブルーモーメントよりも空が深く青く染まる、バブルーモーメント。様々な条件が揃わないとみられない、青より青いブルーアワー。思わず溜息が出る程美しい群青の空は、泡が1つ2つと割られる度にその青を一層深め、瞬く間に黒へと沈んでいった。
儚い青の記憶を壊さないように、私はそっと瞳を閉じる。
ファンタジー
公開:24/07/19 09:38
更新:24/09/01 10:32
バブル ブルーモーメント 表情豊かな空が好き!

ネモフィラ(花笑みの旅人)( 気の向くまま )

いつもご訪問ありがとうございます。
元:ネモフィラは咲うです。大原さやかさんのラジオ「月の音色」では、ペンネーム:花笑みの旅人として投稿しております。
物語を読んでくださったうちのどなたか一人にでも、笑顔になってもらえたらすごく嬉しいです。

すこしおやすみします。

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