沙英子の砂

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さらさらと細かな砂が流れている。砂の流れる音はなくて流れるシーンだけをスクリーン上の映像のように目を瞑ってみていた。夏の浜辺にいっぱいの海水浴客が嬌声をあげている。波のひびきが遠くまた近くで絶え間なく繰り返す。砂浜に敷いたビニールシートに寝てうとうとと眠りながら夢のように砂の流れ落ちる様子をみていたのだった。砂はみていると人の背中を流れている。そしてそれは沙英子の背中だった。肌理の細かい背にとどまることなくいつまでも砂が落ちている。薄目をあけてとなりをみると同じようにビニールシートに沙英子が寝ている。陽光が熱い。沙英子は目をぱっちりとあけると立ち上がって小走りで波打ち際に向かっていった。背中の砂が細かな砂が吹きとばされていっせいにさらさらと散った。目を閉じて午睡に戻ろうとしたが砂が流れるシーンをもう一度みることはできなかった。
沙英子の姿をみなくなってから久しく月日が経つ。
その他
公開:24/07/19 09:37

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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